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鮨 さえ喜 (寿司:北新地) 素晴らしき趣向の世界

箸 
どうも、ベルリン・フィル音楽監督のヴィルヘルム・フルトヴェングラーです。

一度は潜ってみたい、潜らなければならないと思っていた暖簾。
北新地の「鮨 さえ喜」。

ちょぱ兄さんが予約を取ってくださり、ようやく念願が叶う日。

外観
表には看板も暖簾もない。
いささかの緊張を覚えながら引き戸を開け、店内へ。

店内 
美しい白木のカウンターを筆頭に高額店に相応しい設え。
座り心地の良い椅子といい、 寛げるように気も配ってある。
さて、大阪最高峰の人気店、我々はどんな扱いをされるだろうか。

紹介もないまったくの一見だが、席は親方前。
佐伯親方がまず笑顔で挨拶し、説明も非常に丁寧で好感が持てる。
丸刈りの小僧さんもキビキビとした動きで、躾の良さを感じさせる。

もう、この時点で「なるほど」と思う自分がいた。
ならば、ツマミも握りも親方に任せましょう。

突き出し 
突き出しは、のれそれ。
素麺出汁に大根の花、生姜、ネギが入っており、かき回して食べる。

出汁は上品ではあるが、濃い目に仕立ててある。
これが実にバランスが良い。

淡白なのれそれに、主張の強い生姜。
出汁が弱ければのれそれが弱くなり、全体が生姜に負けてしまう。
突き出しから全力で美味い。

トコブシ 
静岡産トコブシと八尾・若牛蒡の胡麻和え。

大きなトコブシは、火入れが良く、良い加減の柔らかさ。
若牛蒡は茎のシャッキリした歯ごたえと、根の柔らかさが上手く共存。

胡麻和えでは味付けが濃すぎないかと思ったが、それは杞憂に過ぎない。
トコブシの風味を壊さず、それでいて貝と大阪野菜を融合させている。

ここから刺身に入るが、ポン酢や醤油といったつけダレにも工夫がある。

ポン酢 
ポン酢にはふぐ皮が入っていて、酸味のきつくない調製も好み。

昆布醤油 
もう、一方は昆布醤油。
醤油に昆布を入れて風味を添加し、細かく叩いて練った(?)ものも混ぜ込む。

昆布の風味が心地よく、少し粘りを持った醤油ダレはこれだけで酒肴になる。
刺身に添えられた大根ツマを付けて食べるだけで、これは極上の酒肴。

河豚のたたき 
まずは、ふぐ刺し。
少し厚めに引いたふぐをサッと炙ってある。
旨味がしっかり乗っており、件のポン酢で食べるとなかなか美味い。

鯛 
九州の真鯛は、7キロの大物。
巨体ゆえ強すぎる歯ごたえを心配したが、しっかり寝かしてモッチリに仕上げている。

旨味も脂もしっかりしていて、美味い鯛。
でも、さらなる旨味と、香りの点で、漁法に拘った明石の極上物には叶わない。

海老芋 
海老芋と松葉蟹の餡かけ。

海老芋のネットリした舌触り、濃厚な甘み、そして松葉蟹の甘みと香り。
ここへ濃い目に引いた出汁が合わさり、実に美味い。
出汁が弱ければ、ピンボケするか、海老芋と蟹が離婚してしまうだろう。

出汁だけ飲めばおそらく少し濃すぎると感じるだろう。
だが、各素材と合わせると実にちょうど良い具合になっている。
そして、それが酒に合うよう計算されている濃度だと思う。

鯖 
締め鯖に、軽い燻製香が漂っている。
脱構築寿司の嫌な記憶が蘇り、私もちょぱ兄さんも一瞬躊躇する。

が、3日寝かして、数分だけ桜チップでスモークした切り身はまるで別物。
たっぷりと脂と旨味が乗った鯖は塩と酢で上品に締まり、
そこに芳しい燻製香が加わり、新たなコク味と香ばしさが添加される。

鯖の持ち味はいささかも殺されることはなく、ただただ旨味が増幅される。
奇を衒った邪道とは違う、基本を踏まえた上での締め鯖への叱咤激励だ。

河豚白子 
ふぐ白子のすり流し、太刀魚、筍、菜の花を添えて。

蓋を鰹の開けると鰹の強い香りと焼いた太刀魚の香ばしさ。
濃い目の鰹出汁だから、濃厚な白子に負けない。

出汁、白子のコク味、菜の花のほろ苦さ、筍の甘み、皆が融合している。
白子をまとった太刀魚のまた美味いこと。
そして、塩をしっかり効かせているからこそピンボケしない一品になっている。

海胆 
北海道のキタムラサキウニの小丼。
最近、塩水パックが大流行だが、これは箱海胆。

が、明礬臭さなどは感じさせず、圧巻の甘みとコク。
何より粒の大きさにちょっと感動した。
この圧巻のコクはこの大きさがあるからこそだろうか。
 
もみ海苔と何かを混ぜたシャリはかなり酸味が強く、この海胆と合う。
心配なのは、このシャリが握りのシャリかということ・・・。

ちろり 
ちろりはどっしりとした錫製。

潮汁 
握りの前に、伝助穴子の潮汁。
でっぷりと太った穴子が蓄える旨味が物凄い。
シンプルな出汁だからこその旨味を余すことなく堪能できる。

総評して、寿司屋のツマミより、割烹料理の領域だろう。
江戸前寿司の正統流儀からは逸脱するものかもしれない。

でも、関西の高額寿司代表として、これが1つの答えかと思う。
無理に正統江戸前を僭称するよりも、関西割烹に寄る方が潔い。

そういえば、私が通う寿司屋の親方たちも同じ時期にこの店に行き、
かなり刺激を受けていたようだった。

ガリ 
ガリは甘みを排したシャッキリとした味付けで美味い。

赤身 
本マグロの赤身は浅ヅケに。
香り、旨味ともしっかりした美味いマグロだ。

産地を忘れたが、大間や戸井といった冬のブランドではなかった。
それでいい、大阪で無理な背伸びをする必要はないのだ。

それに、何よりシャリが美味い。
赤酢らしい風味を蓄えながら、やたらと酸味を尖らせていない。
何しろ関西では「赤酢=きつい酸味のシャリ」なのだから不思議だ。

中トロ 
中トロも繊維のきめ細やかさが素晴らしく、口どけも良い。

シャリの疑問に対する佐伯親方に対する回答は単純明快だった。
「ほんの少しだけ砂糖を入れています」。

熟成され、まろやかになった昔ながらの赤酢はそう簡単に手に入らない。
だからこそ、ほんの少し砂糖を入れることで、酢の尖りが丸くなる。

いつの間にか「赤酢100%原理主義」が広まってしまっていた関西。
邪教の洗脳に染まらず、わずかに砂糖を入れることによって、
シャッキリとしつつ、尖りのない美味いシャリが出来るのだろう。

コハダ
コハダは身厚く、脂の乗った冬らしいもの。
締め加減も素晴らしく、うっとりするような香りを放っている。

ハリイカ 
細作りにしたハリイカ。
タネ質は極上だが、ハリイカの歯ごたえが失われるので、
私にはこの包丁仕事は不要。

ホウボウ 
ホウボウの昆布締め。
平目に比べて、旨味も脂が淡白だからこそ、ごく浅く締めているのだろう。
シャリにもよく合っていて、美味い。

鯵 
鯵は軽く塩を当てている。
ある程度、旨味が乗っているが、他のタネに比べるとちょいと役不足か。

カスゴ 
皮目が美しいカスゴ。
佐伯親方によると、江戸前伝統の「梅締め」という技法を使っているそうだ。

カスゴは締め加減によれば、皮がだいぶ硬くなるが、そうはなっていない。
それでいて、身はきちんと締まっている。

最初にふんわりと梅を感じ、直後に締まったカスゴの爽やかな風味を感じる。
梅が加わったカスゴは旨味を増すようで、これが何とも美味い1カンだった。

ハマグリ 
煮蛤。

握りに対して、あえて注文を付けるなら「少し小ぶりに過ぎる」というところか。
美味いタネにシャリ、もう少し握りが大きいほうが、より堪能できるというもの。
この辺りは、北新地という立地も関係しているのだろうか・・・。

トロタク巻 
お任せの最後は、トロタク巻。
パリッとした海苔が実に美味い。

炭 
それもそのはずで、都度炭火で炙っているのだ。

穴子 
追加した煮穴子は穴子の質も良いが、煮仕事も見事。

江戸前伝統に拘れば、この店は逸脱するかもしれない。
何しろツマミが凝りに凝っている。
「刺身をツマミに少し飲んで、お茶で握り」を正統とすれば、邪道だろう。

しかし、江戸前伝統が「世界」であれば、佐伯流は「趣向」。
江戸とは違う、上方寿司の進化の1つの型として素晴らしいものだと思う。

佐伯親方の狂言、堪能させていただきました。

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【鮨 さえ喜】
大阪市北区曾根崎新地1-5-7 (地図
06-6345-7344

鮨 さえ喜寿司 / 北新地駅西梅田駅東梅田駅

夜総合点★★★★★ 5.0

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