FC2ブログ

鮓 きずな @その11 (寿司:京橋) もう一歩先へ

看板 
東京の寿司屋の看板は生鮮本マグロで上がるだろうが、
「鮓 きずな」の看板は明石・淡路・鳴門の白身で上がる。

訪れた時期(11月下旬)、明石は時化続きだったらしい。
こういう日も、仕入力の底力を確かめられるから嫌いではない。

鯛 
この日、突き出しはなく、真鯛から始まった。
旬知らずの鯛であるが、春の桜鯛、秋の紅葉鯛の季節はとりわけ美味い。

寝かせた身はもっちりとした口当たりの後、奥から一気に旨味が舌に回ってくる。
さすが看板の明石鯛、非の打ち所がない。
だが、鯛の旨味だけで絶賛したわけでは実はない。

山葵 
山葵を変えたのだ。
常連のタイヤ本星付店の店主に紹介された、御殿場マヅマ種。
第三春美鮨の超絶ほどではないが、粘りといい、香り、辛味、そして辛さの向こうにある甘味を感じられる良い山葵だ。

山葵だけで十分、酒の友になる。
忙しくてツマミが出るまで間がある時は山葵を舐めて酒を飲るのもいい。

平目 
平目は、奥が1.2kgの昼締め、手前が1.5kgの1日寝かせ。
手前が実に凄い野郎で、熟成で引き出した旨味をたっぷり備えているくせに、
昼締めのような活かり具合をしてやがる。

乏しい平目経験においてトップクラスであることは確実。
しかし、それでも私は鯛に軍配を上げてしまう。
口中で咀嚼し、喉へ行く寸前の風味、とくに香りにおいて鯛が圧倒するのだ。
やはり、鯛は白身の王であって、魚の中の魚なのか、と実感する瞬間だ。

マグロ 
この日の生鮮本マグロは青森・大間産の中トロ。
脂は手前であるが、赤身に近い奥が香りと酸味に秀でている。
お江戸でようやくマグロの香りを知ったばかりの私は、奥の合わせ一本勝ちとしたい。

蛸 
塩茹での明石蛸。
人肌よりもう少し温かい身から立ち上る香りが、いつもに増して凄い。

香り・弾力・旨味の順に超絶を堪能できる明石蛸。
私はいつも早い時間に訪問しているので気にしていなかったが、
超絶の真価は「訪問時間」にあったことにこの後の訪問で実感した。

茹で上がりから時間が経ち、冷めた蛸からは、絶賛する香りは消し飛ぶ。

蛸白子 
蛸の白子、これが通い甲斐というもの。

蛸桜煮 
蛸の桜煮は柔らかくしつつも、弾力を少し残して煮上げる。
茹で蛸との弾力のコントラストが鮮やかで、舌や歯が困惑するのを楽しむ。

鱈白子 
鱈白子の醤油蒸し。
純白で、プチンとはぜるところが質の良さを物語るが、この出汁がまた美味い。

ブリ 
ブリは佐渡産だったか。
脂の乗りは少し弱いが、何ともしっとりした食感で、繊維に絡む旨味が濃い。

鯖 
銚子産の鯖。
塩や酢を感じ、身の締まりを感じるほど締めているが、その一方でレアでジューシーというカオス。

驚愕の脂の乗りだから、塩と酢を当てないと恐ろしいことになるだろう。
そこへ甘酢白板昆布を加えることによって、幾重にも折り重なった旨味となっている。

太刀魚 
ドーム球場ではなく、五島列島から来た太刀魚の塩焼きだ。
五島列島は脂推しと思っていたが、今回は脂・旨味両推しの圧巻。

玉子ヘタ 
玉子焼を切り付ける時に出るヘタをもらう。
カステラ玉子とよく評されるが、ヘタが最もカステラに近い。

焼き穴子 
明石の焼き穴子。
持ち味が濃い穴子を焼いて、煮詰めで食べるのも幸せなひと時であるが、一度白焼きを食べてみたいとふと思う。

アンキモ 
居酒屋の定番メニューのアンキモだが、度肝を抜かれた。
臭みなど一切無く、代わりに表現しようのない素晴らしい香りが鼻をくすぐる。
舌の上でサッと溶け、何ともいえない甘さとコクが口中に充満。

隣客が少し目を白黒させながら見ている。
ダラダラ会話する間に、少々乾いた切り身を摘むような食べ方では、
残念ながらありつけないかもしれませんね・・・。

赤貝 
今回の赤貝は新たな産地を求めてる途上で出会った、山口県産。
大震災で閖上(宮城県名取市)産が壊滅状態になり、しばらく使っていた香川・観音寺産もほぼ全量が築地へ出荷され高騰しているらしい。

「高くなりすぎてはいけないんです。ウチはそういう店ではないと思うので」
マグロもそうであるが、質と価格のバランスを考え、請求額が高騰しないよう仕入れを模索し続けるのだ。

急速に江戸前仕事を喧伝する店が増えた関西寿司業界。
タネ質や仕事に開きがありながら、値段だけ東京に近づく店も散見できるだけに、親方の姿勢には手放しで賛同したい。

黒鮑 
鳴門の黒鮑。
生鮑は、固い蝦夷鮑よりも、柔らかい鳴門黒鮑の方が美味い。

鰆
淡路産鰆のたたき。
鰆は火を入れると旨味をグンと増すタネの1つだろう。
塩加減と炙った香ばしさが鰆の旨味をすべて引き出している感がある。

もずく 
青森産糸もずく。
パリパリとさえ感じる強い歯ごたえと優しい酸味で口をリセットすれば、いよいよ握りという合図だ。

エンガワ 
平目エンガワ。
素晴らしい香り、そして歯が喜ぶ心地よい弾力。
エンガワに求められる脂はその次でいいや、と思うほど香りと弾力にうっとりさせられた。

金目鯛 
これは金目鯛だったか。
握りの頃は酒も回ってくるので、記憶が少々抜け落ちる・・・。

ヅケ 
ヅケ。
マグロの握りを食べると、山葵が変った効果を強く確認できる。
マグロの香り、じんわり浸み込んだ煮切りとマグロの旨味の相乗効果、
そこへ山葵がツンと効いて香れば、それはそれは美味いもの。

コハダ 
コハダ、新子に近い小さい身だったが、香りは良かった。

カワハギ 
カワハギ。

秋刀魚 
厚岸の秋刀魚。
終盤に至って脂は落ちてきているが、それでも美味い。
秋刀魚自体の持ち味が少々低下した分を、白板昆布が美味く補助している印象だ。

サヨリ 
サヨリ。
軽い塩でキュッとしまった身は旨味が凝縮されている。

蒸し鮑  
蝦夷鮑。
火を入れると独特の香気を放つ蝦夷鮑はたまらない。味も絶佳。

ハリイカ 
今日はハリイカも1日熟成させている。
信条の歯切れの良さはありつつ、ネットリした舌触りも生まれ、そこに強まった甘味が付随してくる。

蛤 
鹿島産の煮蛤。
最近、蛤の質が上がったなと密かに思っている。
だから、漬け込み浅め、煮詰めも緩めのこの1カンが美味いと思うのだ。
最近、煮詰めは穴子と蛤で分けているから出来る芸当でもある。

シラサ海老 
シラサ海老。
この湯通しはやはり美味い。
生と同様の食感がありつつ、熱を加えて初めて得られる甘味も幾分か備える。

海胆 
海胆は、北海道昆布森産の塩水パック。
安定して、いい海胆を仕入れていると思う。

穴子 
煮穴子。
時化で明石産が十分に揃わず、握りは対馬産。

ただの代打ではない、若松勉クラスの対馬穴子。
明石のような弾力はないが、トロトロ煮穴子至上主義であれば明石より対馬が好まれるだろう。

ネギトロ 
ネギトロ巻。
その場で叩くトロと白髪ネギと同じぐらい、パリパリの海苔がいい役者ぶりを見せる。

玉子焼1 
玉子焼。
ジューシーさを増す改良を前回終え、今回は玉子そのものを変えたという。

ふむ、玉子が濃厚になり、よりカステラに近づいただろうか。
それでいてすり身となった車海老と鯛の風味が活きているから、やはりこれは寿司の玉なのだ。

玉子焼2 
あんまり美味いので握りでももらった。

べったら 
ようやく締めだ。

この店は白身の抜群の安定感があるから、変化球は少ない。
が、マンネリ感は微塵も感じない。

そこには、他店へ食べ歩いて吸収し、試行錯誤した成果物が加わり、
少しずつ変化し、進化しているからだと思う。

アンキモのインパクトに心を奪われたが、
山葵、玉子焼の改良、そして煮蛤の薄味仕立てに一歩先へ進みだした足跡をたしかに感じた。

----------------------------------------------------
↓ブログランキングバナー、よければポチッと押してください↓
人気ブログランキングへ

【過去記事】
鮓 きずな@前編(寿司:京橋)
鮓 きずな@後編(寿司:京橋)
鮓 きずな@その2 白身の旨さはどこまでも深い
鮓 きずな@その3 純情生一本の満足感
鮓 きずな@その4 光り物の輝きに魅了される
鮓 きずな@その5 至福の時間
鮓 きずな@その6 鯛の力
鮓 きずな@その7 白身王国万歳
鮓 きずな@その8 出世の階段
鮓 きずな@その9 真剣勝負
鮓 きずな@その10 回想

【鮓 きずな】
大阪市都島区都島南通2-4-9 藤美ハイツ1F (地図)
06-6922-5533

スポンサーサイト