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鮨 太一 (鮨:銀座) 味良し、居心地良し、値良し、銀座の素晴らしい鮨空間

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東京メトロ・銀座駅の階段を上がると、銀座4丁目交差点。

和光本館と三越銀座店を目の前にして「おお銀座だ!」と
思わず田舎者丸出しの言葉を口にしてしまった。

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銀座駅から徒歩5~6分というところだろうか。

外堀通りの一本裏路地、コンクリート打ちっぱなしのビルの2階。
「鮨 太一」はここにある。

ガラスのタネケースなどは無く、高額鮨店の設えであるが、
どこか親しみのある、緊張を強いない、そのように感じる空間だ。

それでも江戸の初めての鮨屋は少し緊張してしまうので、
昨晩の「新ばし しみづ」と同様、小瓶のビールでまず喉を潤す。

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突き出しとして、むかごが出た。

いかにも鮨職人といった風貌の石川親方が、
「召し上がりはどうなさいますか」と尋ねてくる。

柔和な表情、丁寧な口調。
緊張を強いる親方ではないと安心するともに、
これからしばらく楽しい時間を過ごせると確信した。

昼なのでお決まりもあるみたいだが、握りをおまかせで頼む。

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中トロは「赤身とトロの両方を楽しめる」とよく言う。

なるほど、たしかにその通りだと実感できる。
きめ細かい身質で、旨味と脂の甘みとだんだんと強まっていく。

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コハダは肉厚で、身から染み出る脂が程よく溶けていく。

締めた後、数日間寝かしているため、旨味が熟成され、
そのうえ少しまろやかに落ち着く。

酢飯との相性も抜群で、美味い。

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関西ではよく出るが、東京で鰆の握りは少し珍しいのではないか。

少々寝かせたか、ネットリした身に熟れた旨味。
これが酢飯の味と馴染み、とても美味い。

酢飯は、赤酢と白酢のブレンド。
酸味もしっかりとあるが、尖りを抑えまろやかな味わい。

米粒もしっかり立っている。
口中でキシッと噛み締め、その後すぐにほぐれていく。
美味い酢飯だ。

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ヅケ。

赤身をサクから切り付け、陶器の上で常温に戻す。
その時に煮切りを塗っての即席のヅケ。

伝統的な手法ではないが、程よい酸味を持った美味い赤身で、
これはこれで十二分に美味い。

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平目の昆布締め。

しっかりと脂を蓄えた身に、噛むたびに広がるような旨味。

旨味を引き出すためだけに昆布を軽く当てているので、
昆布の風味で平目の持ち味が台無しになるようなことはない。

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活けを茹で、人肌に冷ました車海老。
頭の身と味噌を細かく叩いて握りこんでいる。

驚くほど甘い。
車海老はこれほど甘みがあったかと思うほど甘い。

それにオボロを挟んでいるか。

身の甘み、味噌のコク、オボロの甘み、酢飯の味、煮切り。
すべてが一体になって、素晴らしい1カンになっている。

親方は「海老が好きで、海老に力を入れています」と言ったが、
なるほど美味い海老握りだ。

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脂の乗った鯖をしっかり締め、厚めに切りつけて握る。

酢が馴染み、まろやかになった鯖は、
噛むごとに旨味が詰まった脂が湧き出てくるようで、
鯖の醍醐味を存分に堪能できる。

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蛤は、噛み応えが丁度いい。
固くはなく、サクッとした歯切れの良さが心地よい。

それにハマヅメの味加減が実に美味い。

それに煮詰めを塗らず、煮切りを少しだけ塗る独特流儀。
煮詰めが無いことで蛤の香りが立つ。

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イクラは、魚卵そのものの味を生かしたシンプルな漬け込み。

イクラ自体の味が濃く、親方は「玉子掛けご飯です」と言ったが、
たしかに卵黄を思い起こす味わいだった。

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たっぷりの海胆を軍艦巻にせず握る。

海胆の濃厚な甘み・コクが、旨味の強い酢飯に抜群に合う。

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小柱。

噛み心地の良い縦の繊維感、品良い甘みと磯の香り。
美味い。

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透明感のある身、輝く銀皮が美しいサヨリを
弧を描いて握りこんであり、色気のあるルックス。

淡白なれども噛むごとに旨味が楽しめ、
特有の軽い苦味がまた美味い。

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スミイカ。

酒を頼むと、親方の右に控える若い衆が、
一升瓶やら四号瓶を10本ほど目の前に置いて説明してくれる。

「しみづ」や「第三春美鮨」は日本酒は1種類で、
東京の鮨屋にはそういうイメージを持っていただけに少し意表を突かれた。

この若い衆が憎めない独特のキャラクターで、親方も可愛がっている様子。
彼の振る舞いと親方の突っ込みで何度か店全体が笑いに包まれた。

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これまでのすべての握りが美味いわけだが、この鰯はさらに衝撃的だった。

「松寿司」の鰯もベラボウに美味く、”悪魔の鰯”と勝手に呼んでいたが、
また方向性の違う超絶の鰯だ。

塩をして汗をかかせ、そこからまた別の仕事を施すのだろうが、
脂の美味さだけでなく、魔法で引き出したような深い旨味に芳しい香り、
細かい包丁目による心地よい舌触り、何もかもが絶品なのだ。

あまりの美味さに思わず唸ってしまったのを親方が気づき、
「何でも締めたくなる性分なだけです」と謙遜する。

いくら値が上がったとはいえ、鰯は花形スターダネではない。
だが、仕事次第で超絶の1カンとなることをこの店でも体験できた。

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カスゴは皮が柔らかく、口の中でサッと酢飯と混ざり合う。
皮目の品良い脂と意外に力強い旨味を余すことなく味わえる。

皮が固くて酸っぱいだけの小鯛。
という代物に当たりがちなタネだけに、美味さが強く印象に残った。

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続いて江戸前伝統ダネの煮イカが握られた。

煮上げられたスルメイカは、表面がパキパキと歯ごたえが面白い。
豊かなイカの風味に、あっさり目の煮詰めが実に良いアシスト。

老舗の濃厚な煮詰めも美味いが、この店のさっぱりした煮詰めも美味い。

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鮑。

ふんわりと柔らかく、それでいて確かな歯応えもある。
芳醇な香りと濃密な旨味。

幾筋も入れられた切込みによって酢飯にピタリと寄り添い、
鮑、酢飯、山葵、煮詰めがタイムラグ無く口中で渾然一体となる。

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蝦蛄は、カツブシがぎっしり入っている。

蟹肉を思わせる身と、ホクホクのカツブシの両方が美味い。

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脂をたっぷりと蓄えた穴子は、ふわふわに柔らかく煮上げられ、
口の中であっというまにとろけていく。

香りも良い穴子で、だからこそあっさり目の煮詰めとよく合っている。

柔らかいことだけが美味い穴子の条件ではない。
穴子の質、煮仕事、酢飯、煮詰め、すべてのバランスが整ってこその美味さ。

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穴子が出たということは、おまかせも終わりだろう。

たまらず鰯をもう1カン握ってもらう。
やはり、超絶だ。

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玉子で締め。

しっとりとした玉子焼は上品な甘さ。

中年夫婦が親方にやたら話しかけるので、会話はそこが中心となったが、
合間合間で親方は客全員に話しかけ、しっかりとコミュニケーションを図る。

「ピリピリした空気の中で黙々と食べるというのが苦手で」という親方は、
一見客にも優しく話しかけ、余計な緊張感を見事にほぐしてくれる。

無論、やたら話しかけるわけでなく、品位を保った付かず離れず。
何とも居心地が良く、ついつい冷酒も2合楽しんだ。

至福の1時間半だったが、最後の会計でさらに驚いた。

ビール小瓶1本、冷酒2合、鮨21カンで14,000円。
6丁目の裏路地とはいえ間違いなく銀座で、である。

店を出る時「良かったら、またいらしてください」と親方は言った。
東京へ来る機会があれば必ず再訪する、そう固く自分に誓った。

<江戸下向 平成29年>
東京駅 斑鳩 (ラーメン:東京駅)
新ばし しみづ (鮨:新橋)
新橋焼きとん 浅草橋店 (焼きとん:浅草橋)
文殊 馬喰横山店 (立ち食い蕎麦:馬喰横山)
鶴八分店 (鮨:新橋)

【訪問時期:2017年11月後半】

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